英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

描写構文(1)

一般にSVOCと言えば、次のような表現が思いつく。

(1)Mary found the book interesting.

これと似た構文として(2)のようなものがある。

(2)Mary ate the carrots raw. 「メアリーはニンジンを生で食べた」

学校文法では上のタイプの構文で出てくるinterestingなどの語を補語と呼び、(2)のようなものを擬似補語あるいは準補語と言ったりする。ここで、補語と呼ばれるものと、準補語と呼ばれるものは、当然分ける必要があって別々の名称で呼ばれており、よく授業等でも指摘される点として、「補語は文に必須の要素」であるのに対し、「準補語は必須要素ではない」ということが言われる。要するに、(1)ではinterestingを取ってしまうともともとの「分かる」の意味では解釈できなくなり、(2)からrawを取っても「ニンジンを食べる」の意味は保たれる。準補語と言われるものでも(2)とは別のタイプと考えられるものに(3)のようなものがある。

(3)Mary painted the house red.「メアリーは家を赤く塗った。」

形式は同じに見えるが、意味の点で(2)の準補語は「目的語がeatする時にどういう状態にあるか」を説明するのに対し、(3)の準補語は「目的語がpaintした結果どうなるか」を説明している。(2)のタイプを描写構文と呼び、(3)のタイプを結果構文と呼ぶ。そして、(2)の準補語を「描写述語」と呼び、(3)のタイプの準補語を「結果述語」と呼び、両者を合わせて「二次述語」と呼ぶ。

 

以下、描写述語について何点か。

まず、描写述語は、主語を描写する(4)のタイプのものと、目的語を描写する(5)のタイプのものがある。

(4)Mary drinks his coffee naked.「メアリーは裸でコーヒーを飲む」

(5)Bill drinks his coffee black. 「ビルはブラックでコーヒーを飲む」

 

一般に補語と言われるものでも「主格補語」と「目的格補語」の二つがあるが、いわゆる学校文法におけるSVOCの形の場合は、目的格補語のみになる。ところが描写述語の場合目的語があっても(4)のように主語の描写ができる。

 

描写述語は「①述語が対象に備わっている本来の性質」を記述し、同時に「②一時的な属性」を記述するものでなくてはいけない。②からして、描写述語はステージレベル述語(stage-level predicate)でなくてはいけず、個体レベル述語(individual-level predicate)は許されないと言われている。ステージレベル述語とは、一時的な状態を表すもの、個体レベル述語はモノの性質や恒久的な状態を表す述語を指す。(6)では、ステージレベルのusedは許され、個体レベルのinterestingは容認されない。

(6)Mary solved the book used / *interesting.

ただし、この原則には反例に思われるものもあるらしく、例えば(7)では個体レベル述語が用いられているが、容認される。

(7)I prefer my glasses dark.

(8)*I sold my furniture heavy.

ただし、(8)がダメなことから、状態変化を表す動詞の場合はやはり不可だと言える。

 

以下に示されるように、前置詞の目的語を叙述することはできない。

(9)I met Mary drunk. / *I met with Mary drunk.

(ただし、主語描写述語と考えればよいのでは?)

 

二重目的語構文における、間接目的語(O1)は、描写述語によって叙述できないが、受動態になると可能になる。

(10)*They gave Mary a fine drunk.

(11)Bill was given a fine drunk.

 

主語描写の場合と、目的語描写の場合でdo soによる置き換えに差が出る。

(12)Mary walked into the room drunk, but Bill did so sober.

(13)*Mary ate the meat cooked, but Mary did so raw.

 

描写述語は複数共起することが理論的にはできるらしい。

(14)They eat meat raw, tender.

(15)Mary ate the salad undressed naked.

(16)*Mary ate the salad naked undressed.

ここでの例から、主語描写述語と目的語描写述語が共起する場合、目的語描写述語が前でなくてはいけない。

 

ただまあ、個人的な感想では、単純に近いものとまず結びつくことを優先すれば、表面的に見ても、saladとundressedが並んだ(15)の方がそりゃあ自然だろうとという感じはする。

 

以下の例から分かるように、描写句の前置可能性について、主語描写句では可で、目的語描写句は不可である。

(17)Totally naked, the man ate the meat.

(18)*Raw, the man ate the meat.

 

まあこれも、正直学校文法のレベルでnakedの前にBeingおぎなって分詞構文って考えたら、そりゃあそうだろう、という感じはするが、生成文法的には、こういうのは全て仮定される構造上の描写句の位置の違いによって説明されるらしい。

 

 

参考

岸本・菊池(2008)『叙述と修飾』研究社.