英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

get受身(2)

「感情表出構文としてのget受動文と完了概念 ー 意味の拡張と慣習化の間」(岩澤勝彦)という論文があったので読んでみた。

 

(1)Our grant got cancelled (darn it!).

 

この例文ではget受身が使われているが、カッコ内のdarn itから分かるように、強い憤りの感情が表現されている。普通の受身文にはこうした表現を付加することは不自然だという。

 

この構文で表される感情はこうした怒り等に限らず、プラスのものもマイナスのものもある、かなり広範な意味合いを文脈次第で持ちうるという。

 

妥当かどうかはさておき、この論文ではhaveの完了形との並行性を見出している点が面白い。たとえば、主語の指示物は現存するものでなくてはいけない、という点で似ている。

 

(2)*Einstein has lived in Princeton.

(3)*Lord Mountbatten got buried in state.

 

また、get受動文には内容的に比較的最近の出来事であるという含意があり、それも現在完了に似ている。また、感情が向けられる対象は心理的に近い事柄であるからこうした共通点が見られることは自然だと書かれている。うーーーん、あまり僕はI'm convincedではない

 

get受身が感情表出機能を持つという点に関してはモダリティ表現であるという言い方をしている論文がある。「get受動文のモダリティ的意味について」(田村敏広)という論文。様々なモダリティ的意味が含意されるからニュースなどの客観的事実の伝達を意図したコンテクストでは適切ではないという。

 

さて、get受動文は普通の受身と違い、動作的意味しか持たないことは周知の事実。つまり、例えばbe paintedであれば「塗られる」という動作的意味と「塗られた状態である」という状態的意味がありうるが、getを用いた場合の受身は前者のパターンしかない、ということ。そしてそれだけでは不十分で、get受身では動詞句によって記述される主語に対する行為の結果状態に強い焦点があてられる。その帰結として(?)、主語は何かしらの状態変化を生じていなければならない。

 

(4)Mary was followed by a little lamb.

(5)*Mary got followed by a little lamb.

 

ここで子羊についてこられても何の変化も想定されないので、(5)は不自然らしい。それに対し、

 

(6)Mary got followed by a knife-wielding homicidal maniac.

 

この例なら、少なくとも心理的に変化があることが想定され、この場合はget受身が問題ない。面白いのは、こうした<主語への行為>から<主語の状態変化>までのプロセスが、非段階的、瞬時的なものとして解釈されるという点。

 

(7)??The hall got gradually cleared.

 

こうした「徐々に」という意味の副詞はその点で不自然だという。逆に

 

(8)My computer got instantly locked.

 

のような瞬間的な意味を持つ副詞とはよく共起するそう。get angryなどに見られるように、get受身のgetは本来起動動詞であり、段階的変化の意味を要求しない語句が続く。よって、get tallなどはかなり不自然である(急に背が伸びたりしないから(残念))。そこで、この論文ではget受身に関し次のようにまとめている。

 

(9)「主語に対する行為」から「主語に状態変化が生じる」までの一連の動的事態を非段階的・瞬時的なものとして記述する形式である

 

get受身が様々なモダリティ的意味を持ちうる基盤にはこうした性質があると述べている。「プロセスに添ってではなく、一括的に事態をとらえている」点から、「自分の意志やかかわりとは無関係に生じた事態である」という捉え方をしていることになり(客観視している(?))、そこから、「自分にはどうしようもなかった」ということで後悔や失望、予想外といった意味合いが生じる、とのこと。

 

客観的にとらえているから主観的な意味が出る、というのは僕にはよく分からない。

 

また、「状態変化」に焦点があるので、話者の取り返すことのできない無念さから後悔や失望などの否定的な感情が生じやすい、とのこと。

 

この点は、一つ目の論文でいうところの「完了」との類似性とかかわりがある気がしないでもない。