英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

get受身(1)

国学院大の文法問題で次のような正誤問題が出された。

 

(1)To his great surprise, it was his brother-in-law (ア)who (イ)got arrested yesterday for (ウ)entering an apartment house (エ)where was restricted to women’s use.

 

答えは当然エで、主語が空白になる構造なので関係代名詞のwhichやthatにするのが正しい。

 

ここでは下線のイの表現に注目しておきたい。

 

一般的に受け身は<be PP>の形で表され、状態の読みと動作の読みのいずれかが成立する。ここでの<get PP>はそれとは異なり、動作的な解釈しかない。このようなget受身についていくつかの文献を参考に数回にわたりメモしておく。

 

まずは概論的な内容として影山(編)(2009)『日英対照 形容詞・副詞の意味と構文』からいくらか。

 

この構造を扱った研究は少ないらしく、それはここ最近発達した構文で、もっぱら口語的な表現だかららしい。

 

(2)John was shot by Mary deliberately.

(3)John got shot by Mary deliberately.

 

beを用いた受身(以下受身)では文末に置かれたdeliberatelyは、動作主であるMaryの意図を表す。つまり、「意図的に撃った」。一方、get受身では主語のJohnの意図を表し、「意図的に撃たれた」の意味になる。ちなみに、Huddleston and Pullum (2002)ではJill deliberately got arrested.という例が挙げられている。

 

なお、mustと共に用いられる場合、get受身では主語への義務が表され、普通の受身では動作主への義務が意味される。

 

一般にget受身はby句を持たないことが多いが、最近ではby句を持つパターンも用いられている。ただし、受身ではby句は動作主の性質を持つが、get受身ではby句は動作主の性質を持たないらしい。

 

(4)The ship was / *got sunk to collect insurance money.

 

ここで用いられている不定詞は目的の用法で、意味上の主語は動作主である沈めた人である。表面的にby句はないが、そこで省略された動作主を先行詞に取る。一方、get受身はこの文では許されないということは、最初から動作主が存在しない、ということになる。

 

(5)How was this window opened?

(6)How did this window get opened?

 

受身文の場合、純粋に開けた方法を訪ねているのに対し、get受身では「開けるべきではなかったのになぜ開けたのか」という風な非難的意味合いが帯びる。よって、(6)に対し、We used an old fork.のような応答をすると奇妙に響く。

 

ただし、迷惑・被害的意味を帯びることが多いと言っても、100%いつもそう、というわけではないようである。Huddleston and Pullumでは迷惑や被害だけでなく、逆に恩恵の意味合いを表す場合もあるとしてget promotedという表現を挙げている。類例として考えられるのはget hiredだろうか。

 

(7)The fresh paintwork got rained on.

 

get受身文の主語は、物理的、心理的、社会的など、何らかの影響を受けている。(7)の文では描きたての絵に雨が降ったら台無しになる、といった影響が感じられる。一方、主語が例えばthe lakeなどの場合、何の影響もないのでその文は容認されない。

 

ただ、何らかの影響を受けるというのは普通の受身にも言えることじゃないのかなぁ~~

 

なお、「作成」的な意味を持つ動詞(make / buildなど)はget受身では原則用いることができないという。

 

荒木(編)『英語正誤辞典』にget受け身に関する記述がある。それにもやはり主語に来る名詞はあらかじめ存在しているものでないといけないと書かれてあり、上の「作成動詞」は使えない、というのと同じことを言っている。

 

同書で面白いことが書いてあった。

 

(8)The cache of marijuana was / got found by Fids, the police dog.

 

この文で、getを使うと「マリファナの隠し場所が見つかったことが残念だ」という意味合いがあり、話し手がかかわっていると言ったニュアンスが出るが、普通の受身では必ずしもそうした意味合いはない。