英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

最上級と関係詞(1)

TIMEを読んでいたら次のような英文が出てきた。

 

(1)The geopolitical environment is the most dangerous it's been in decades, and yet the global economy is mostly doing well.

 

ここでit's been in decadesは関係詞節となっているが、先行詞である名詞が見当たらない。最上級の場合にはこのように形容詞や副詞が関係詞の先行詞になれる。これについてはHuddleston and Pullum (2002)の1169ページに簡単な説明がある。ここでの例文を挙げる。

 

(2)The system seems to be working the most efficiently that it has ever worked.

 

個人的には形容詞ならまだ名詞を読み込んだことにして関係詞修飾ができる、なんて考えられそうと思っているけれど、さすがに副詞でやられてしまうと、これは最上級としての特徴なのだな、と思わざるを得ない。この分厚い本での説明で役に立ちそうなことを二点ほど。

 

①thatかゼロ関係詞のみ可(whは使えない)

②必ずtheがつく

 

河野 (2014)では最上級につく関係詞について詳細に述べられているが、そこから数点ほどメモ。(なお、この論文と河野 (2012)では最上級以外のケースも含めて「範囲指定の関係節」というくくりを与えて分析してあり、非常に興味深く勉強になる。あまりこういうことは言わない主義だけど、これについては読んでいなければ英語の先生ならせめて6章だけでも読んだ方がいい。)

 

③節内は完了形が多い

(1)でも(2)でも確かに完了形になっている。

 

④否定になりにくい

良く受験の正誤問題なんかで見かける気がするけれど、最上級を修飾するタイプの関係詞節では否定形になりにくい。

 

(3)This is the most interesting picture that I've ever / never* seen.

 

意味を考えてみれば、neverがおかしいのは当然といえば当然だが、普通の関係施設で否定形が現れうることを考えれば、確かに一つの特徴と言える。八木 (1987)では比較級におけるthanと同じように、最上級の場合はthatが比較対象を示す「相関節」であるという説明がなされ、以下のような例があがっている。

 

(4)John played the roughest that he ever had.

 

良く知られているようにthan以下には原則否定が来ない。thatが同じような相関節であると考えるならば、否定が来れないのも納得がいく(気がする)。

 

 

参考

Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum (2012) The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge University Press.

河野継代 (2012)『英語の関係節』開拓社.

河野継代 (2014) 「最上級と共起する関係節について」『英文法語法研究』

八木孝夫 (1987)『程度表現と比較構造』大修館書店.