英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

longについて

longには次のような使い方がある。

 

(1)Remember also that it does not take long to say 1,000 words. That's the number we would expect to find in a five-minute conversation.(学習院大)

 

ジーニアスなどの辞書を見るとこの場合のlongは名詞という扱いになっている。

 

が、Huddleston and Pullum (2002)ではあくまで副詞だと書かれている。まあ、そうだよね。

 

(2)Take as long as you like.

(3)How long can you give me.

 

同書ではこれらの例文をあげて、as...asに挟まれたりhow に修飾されたりするんだから名詞ではなく副詞だ、という。(1)の例のように動詞の後ろにlongが単独で現れる使い方ができるのは、一部の限られた動詞のみで、同書ではtake / have / need / spend / give / beが挙げられている。また、名詞のように見えても主語では原則使えない、と指摘されていて面白い。

 

同書ではlongが動詞の次に置かれる場合は肯定文ではあまり使われない、と書かれていて、このことに関しては一般的な辞書にもしっかりと「通例否定文・疑問文で」と書かれている。

 

よく言われるように、英語には否定対極表現(あるいは否定極性表現)という一連の語群があり、これらは否定文あるいは疑問文・条件文などでのみ使用が認められる表現のことを言う。要するにざっくり言えば肯定文以外ということになるので、「非肯定」とまとめることもできる。日本語の「ちっとも」とか「誰も」とか「一言も」とかも同じタイプと考える。

 

有村ほか(2009)『英語学へのファーストステップ』(英宝社)には否定対極表現としてany / everなどの典型的なよく言われる表現に加え、muchやlongなどもまとめて挙げてある。muchとlongについては「条件付きで」肯定の文脈に現れることもあると書かれており、具体的にはtoo がついたり比較になったりすればよい、とある(なおこのことは普通の辞書にも書いてある)。

 

(4)? He stayed long.

(5)He stayed longer / too long.

 

また、動詞の前なら単独で肯定文にも現れることができる。

 

(6)I have long thought of moving to Kobe.

(7)We much prefer his offer.

 

みんな大好きMichael SwanのPractical English Usageにもlongに関する項目があり、そこでは肯定文で使われる場合、too / enough / as / so などと共に使われる、とある。

 

(8)The meeting went on too long.

(9)I've been working here long enough. Time to get a new job.

(10)You can stay as long as you want.

 

そして、こうした条件が満たされない場合、同じ意味を表すのに肯定文ではfor a long timeを使う、とある。

 

(11)I waited for a long time, but she didn't arrive.

 

このfor a long timeが否定文で使われる場合の解釈の違いにも触れられていて面白い。

 

(12)She didn't speak for long. (= She only spole for a short time.)

(13)She didn't speak for a long time. 

 

カッコで書かれているように(12)は「彼女は長くは働かなかった→短い時間しか働かなかった。」と解釈する。一方の(13)は「彼女は長いことしゃべらなかった→長いこと黙っていた」と解釈できる。そしてFor a long time she didn't speak.と同じ、と書かれていて面白い。要するにfor a long timeが否定のスコープに入るかどうか、という話。

 

上に書いたようにlonger、すなわち比較級になれば肯定に現れる、わけだけれど、逆にfor a longer timeとは言うのか、というと、Michael Swanによれば、「いや、for longerとする」とあり、for a longer timeには×がつけられている。

 

もちろん、

 

(14)The second reason is that these days, young adults often live with their parents for a longer time than they did in the past. (高崎健康福祉大

 

というようにfor a longer timeという表現が皆無なわけではない。が、COCAで調べてみると、for a long timeが12500例くらい出てくるのに対して、for a longer timeはわずか90例ほど(そしてfor longerが1260例くらい)なので、やっぱり普通は比較の場合はfor longerとするとしておいた方が安全かもしれない。

 

昔はIt will not be long before SVという表現なのに対してなぜIt will be a long time before SVあるいはIt will be a while before SVなのか本当に不思議で仕方がなかったが、そもそもlongが否定対極表現だ、と考えれば一発で解決するとわかった時はなかなか感動した。

 

が、納得したように見せかけておいて、そもそも、なぜlongが否定対極表現なのか、ということになると、考えても仕方がない気もするが、やっぱりよく分からない。

 

以前ある大学の先生が「存在は名詞で表して非存在は形容詞で表す傾向にあるのではないか」と言った旨のことを指摘してくださったが、確信はゼロだけどなんかそんな気もする。