感嘆文についての記事で「本来感嘆文ではwhatとhowのみが使われるが、文中に埋め込まれる場合はそれ以外のwh語も使える」と書いたが、このElliott (1971,1974)とGrimshaw (1979)の見解に対して、Huddleston (1993)は、そうした分析は誤りで、whatとhow以外はたとえ埋め込み節においてでも感嘆文としては使われない、と述べている。個人的にはやっぱりElliott 達の言うように埋め込み文では感嘆文にwhat / how以外も現れると考える方が少なくとも直感的には正しい気がするが、指摘している点などは面白く様々に勉強になる。以下、そういう参考になる点・面白い点のメモ。
まず、感嘆文とopen interrogative の識別について以下の点を挙げている。
(1)主語以外では疑問文では主語助動詞倒置が義務的に起きる。一方、感嘆文では普通、倒置は起きない。
(2)感嘆文はhowとwhatのみを許す。疑問文はすべてのwh語を許す。
(3)howが動詞修飾の場合、(4)のように感嘆文ではhowは程度副詞、(5)のように疑問文では様態副詞と解せられる。
(4)How did he persuade him?(疑問文)
(5)How he hated him! (感嘆文)
(6)感嘆文ではelseが共起できないが、疑問文ではできる。
(7)whatは感嘆文の場合、可算名詞単数形の場合、不定冠詞のaに先行する。疑問文の場合それは不可である。
以上のうち、埋め込み文になると当然(1)の識別は使えない。さて、この論文で問題とされているのは(8)のようなwhat / how以外が使われた埋め込み文である。
(8)You won't believe who Ed has married.
Elliott (1971,1974)などではこのような文は感嘆文に分類されるが、「なぜ埋め込み文だけwhoなどが許されるのか妥当な説明が得られない」、と反論している。
個人的に面白いと思ったのは、Elliott (1971)はwhoなどが埋め込み文で感嘆文に共起できるのはidiosyncraticだと認めつつも、「埋め込みではない疑問文でwhetherは使えないのに対して、間接疑問文では使える、というのと平行していると考えられる」と述べている点。さらにそれに対して、Huddlestonは「埋め込みではない場合、主語助動詞倒置という形で対応するものが存在するが(要するに、I don't know whether he is angry.みたいな文に対して、埋め込みではないIs he angry?という疑問文が存在する)、一方の(8)みたいな例に対しては対応する埋め込みではない文が全く存在しない」ので、このElliottの見解は妥当ではない、と述べていて、非常に面白い。
(9)I know how tall he is.
この文はあいまいで、疑問文の場合「彼がどれくらいの背か知っている」となり感嘆文の場合「彼はものすごい背が高いことを知っている(I know that he is remarkably tall.)」となる。もしElliott達の言うことが正しければ、(10)もあいまいになると予想されるが、実際はあいまいではなく、疑問文の解釈しかない。
(10)I know who Ed married.
(なお、ここでは本文でBut there is no ambiguity here (any more than there is in I know Ed married Susan, where the complement is declarative). という英文が使われていて、比較の勉強に大変良い。)
文献
Huddleston, R. (1993). Remarks on the construction, “You won’t believe who Ed has married”. Lingua, 91:175–184.