英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

受験の難単語メモ(1)crestfallen

諸事情により入試で出題される長文中に出てくる難しい単語・熟語を集めることになり、せっかくなので記事としてまとめていく。

 

(1)Digging in the garden reveals nothing, and the young man is completely crestfallen. (早稲田大 文 2015)

 

ジーニアス】

①(予想外に失敗して)意気消沈した、がっかりした、悲しみに沈んだ

②うなだれた

 

【Cambridge】

disappointed and sad because of having failed unexpectedly

 

Longman

looking disappointed and upset  

 

類義語にdowncastが挙がっている。こちらの単語は目について使うことが多そう。

 

(2)He said nothing and kept his eyes downcast.

(3)Eyes downcast, she continued eating.

 

ところで、この文は、夢に出てきたようなお宝が彫っても実際にでは出てこない、という流れの中の一文だが、ここで使われているreveal nothingもなかなか高頻度で使う表現だと思う。

 

(4)Was there a tiny piece of dirt or glass in the eye? A careful examination revealed nothing.(富山大)

 

「注意ぶかく調べてみたが、何も出てこなかった」くらいの意味だろうか。後ろに形容詞を伴う形も良く出てくる。

 

(5)However, he started to experience some difficulties with his memory, so he consulted a brain specialist. But two major tests revealed nothing wrong. (関西大)

 

「特におかしなところは出てこなかった(明らかにならなかった)」くらいの意味。いずれも、「主語によって本来出てきそうな結果が出てこない」というような意味合いで使われていると思う。また、別のタイプのよく見る使い方として、次のような「表情・態度など」が主語になるタイプがある。

 

(6)June looked at Justine to see if she registered this as an insult, but her face revealed nothing.

 

「表情からは何も読み取れなかった」くらいの意味だろう。

 

crestfallenに話を戻す。この語をCOCAで検索してみるとわずか221例しか出てこない。一つ一つの例を見てみると、(A)look / beの補語で使う、(B)分詞構文っぽく使う、というパターンが目立った。叙述用法はあまり多くなく、その場合は、ざっと見たところlook / expressionが修飾されているケースが多い。

 

(7)He looked at her, crestfallen.

(8)She'd seen the crestfallen look in my eyes. 

 

 

 

 

 

 

 

潜伏感嘆文について

青山学院大の文法問題で次のようなえげつない問題が出題されている。

 

(      ) odd the way you know what I'm thinking.

①  It's    ②  What's          ③  Which is          ④  Who's

 

答えは①になるが、文法的にどういう形をしているのか。一般的に名詞句は外置ができないのでなかなか不思議な構文。

 

こういったタイプの文を潜伏感嘆文という。潜伏感嘆文とは名詞句を用いた感嘆文を言う。

(1)John couldn't believe what a height the building was.

(2)John couldn't believe the height of the building.

 

名詞句を用いた(2)のような文は基本的に間接感嘆文である(1)と同じような意味を表すらしい。似たようなものに潜伏疑問文というのがある。

 

(3)James figured out what the plane's arrival time would be.

(4)James figured out the plane's arrival time.

 

ここでも下線を引いた部分の名詞句は(3)における間接疑問文に該当する意味を持つ。

 

このような一見類似した構文だが、It外置の形を用いることができるのは潜伏感嘆文のみになる。

 

(5)It's amazing the big car he bought.

 

これは一番最初に挙げた青学の問題と同じ構造をしている。そしてこれは次のような文と同じ意味合いを持つという。

 

(6)It's amazing what a big car he bought.

 

(なお、whatの次にaが来ていることからこのwhatの節は疑問文ではなく感嘆文であることに注意。)

 

このような構造を取れる形容詞はamazing / incredible / surprising / terrible / odd / remarkable / wonderful / appalingなどで、当然感嘆文であるからそうした感情的な意味合いの強い形容詞に限られる。試しにCOCAで形容詞をamazing / incredible / odd / wonderfulに絞って検索をかけてみた。

 

It is amazing the 名詞 119例

It is incredible the 名詞 18例

It is odd the 名詞 2例

It is wonderful the 名詞 7例

 

検索結果には少なからずIt is adj that SVのthatが省略された形も含まれているだろうから大体の数ということになるが、とりあえずamazingがこの構文に使われやすそうということはなんとなくわかる。引っかかった例を二つほど挙げておく。

 

(7)I think it 's wonderful the way it's changed our families.

(8)It 's incredible the way you look like her under all that paint.

 

似たような構造を持った文に次のようなものがある。

 

(9)It isn't normal, this kind of thing.

 

このタイプの文は右方転移文と呼ばれ、書き言葉ではこのようにカンマが置かれるので上記の潜伏感嘆文とは区別できる。

 

(10)They're long, the books Bill is reading. (*It's long, the books Bill is reading.)

(11)It's amazing the long books Bill reads.

              (*They're amazing the long books Bill reads.)

 

この二例から分かるように右方転移文では代名詞と名詞句の間に数の一致が見られるが潜伏感嘆文ではそれが見られない。また、右方転移文の場合、右側に置かれた要素は旧情報で、潜伏感嘆文の外置の場合は外置された要素は新情報となる、という違いもあるらしい。一方、名詞句は一般的に定ではなくてはいけないという共通点もある。

 

意味解釈について数点。

 

(12)It's amazing the people you meet at these conferences.

 

この文は、

(13)It's amazing the number of people you meet at these conferences.

(14)It's amazing the kind of people you meet at these conferences.

 

のいずれの解釈もできるらしい。このように「種類」や「様態」を表す語やnumberなどのように段階的意味合いを持つ語が潜伏感嘆文として現れやすく、表面的に現れていない場合はその意味合いを汲んで解釈することが多い。

 

潜伏感嘆文は要するに感嘆文であるから、それによって表される内容は疑問文の場合と異なり確定している。さらに、「極端に」という意味合いが含意される。例えば(13)では「数が非常に多い」ことが含意される。

 

昔から

 

the extent to which SV

 

は「どれほどSVするか」というhowっぽい意味で解釈することが多いのはなぜか疑問だった。文脈上そう解釈するのが普通なので勝手にそう解釈していたが、要するに、これも潜伏感嘆文ということになる。青学の長文に次のような一文がある。

 

(15)A study has revealed the surprising extent to which we rely on modern media.

 

ここではthe extentにsurprisingがついているのが興味深い。

 

 入試問題で潜伏感嘆文のit外置はなかなか見つかるもんじゃない。最後に一つ苦労して見つけたそんな例を載せておく。

 

(16)It is quite amazing the number of things that can be reconstructed - old monuments, parts of human bodies, extinct animals and plants that can no longer be found on earth, crime and accident scenes, environments, cosmic events, dead languages, to name only some.(宮城大)

 

参考

熊本千明 (2018)「潜伏感嘆文の意味特性について」

村田勇三郎 (2005)『現代英語の語彙的・構文的事象』開拓社.

 

【would rather+節】について

上智大学の長文問題に次のような会話が出てくる。

 

"Oh, now I'm sure they'll be bringing out their autograph books!"

"I'd rather they didn't," said Mrs. Oliver.

 

下線を引いた構文は受験産業でも教えられることが多いと思われるが、would ratherと言えばどちらかというと助動詞として次に動詞の原形が続く形が多く、上に挙げた例のようにSVが続く形は珍しいと言える。

 

大室剛志 (2018)『言葉の基礎2 動詞と構文』では、以下のようなものをこのSVが続く構文の優先規則と呼んでいる(p166)。

 

a. 補文となる節は仮定法である。

b. 節を従えているのは'd (= would) ratherである。

c. 補文標識thatが無い。

d. 補文の主語は主格である。

e. 主節の主語と補文の主語は異なる。

 

この本では、would rather SVの構文が特殊であるという。それは、助動詞と考えればなぜ後ろにSVが続くかという点で特殊であるし、wouldがもともと本動詞であることを考慮して仮にwouldを動詞と考えても、疑問文が次のような形になることからやはりそれでも特殊な表現である、ということらしい(疑問文では動詞ではなく普通は助動詞が前に出る)。

 

(1)Or would you rather she came to see you?

 

上に挙げたような優先規則に逸脱する例が少数ながら見つかるという。

 

(2)I'd rather him have stayed there because I agree with some of his views.

 

これはBOEというコーパスからの例らしく、このように、目的格になっているという点が上記に逸脱している。こんなのがあるなんて知らなかった。。。

 

このように目的格を取る場合、「補文標識のthatがなく、かつshouldなどを伴わず形態的に動詞の原形の形のみが用いられている (P173)」、とのこと。

 

試しにCOCAで【would rather+代名詞】で検索をかけると、

 

would rather them 7例 ('d rather them 12例)

would rather us 4例 ('d rather us 1例)

would rather me 2例 ('d rather me 8例)

would rather him 2例 ('d rather 11例)

 

がヒットし、一つ一つ例を見ていくと、確かにその条件にすべて従っている。二つほど例を挙げておく。

 

(3)If it takes some of them longer, I would rather them stay and earn the diploma than to quit.

(4)This book tells stuff about Sarah Palin that Sarah would rather us not know...

 

二個目の例では関係詞節内で使われている点が興味深い。

 

本書の調査ではthatがついた例は見つかった例のうち、ほんの6%に過ぎないらしい。COCAで検索してみると次のようになった。

 

would / 'd rather that  45例

 

(5)I 'd rather that you didn't refer to the Folk that way.

(6)For my part, when children grow up I would rather that they fuck than kill.

 

二個目の例はなかなか面白い。「なんでテレビとかで他の人がエッチしているのを見てはいけないんですか?見ると真似すると思うんですか?暴力とか殺人とか普通に見ますよね?『僕に言わせれば、殺人なら全然エッチしてね』確かに~~

 

それはさておき、この例ではthat節SVとありながら、後ろにthan doがついているというなかなか熱い形になっている。

 

入試問題でも一個だけ見つかった。

 

(7)Would you rather that we were clever or that we were happy?(東邦大)

 

 

 

That's whyについて

学習院女子大の会話問題で以下のようなものがある。

 

Sam:   I’ve had enough of my job. I’m really thinking of quitting once and for all.

Jon:     What’s the matter, Sam? I thought you liked your job.

Sam:   I did. That is, until my old boss left the company. Now, we have a new guy, who’s really pushy and stubborn. He never listens to anybody. He just has to have everything his own way.

Jon:     Sounds like he’s a horrible person to work with.

Sam:   You can say that again. That’s why I’m going to start looking for a new job.

 

設問箇所は埋めてある。

 

 

下線を引いたthat's whyは受験でも定番の表現で、that is becauseと混同しないようになどと注意喚起されることが多い気がする。自分の授業ではこれは「だから」という日本語を当てておくといいと言っている。文法的にはthat is the reason why SVという表現の先行詞省略という説明がされることが多いが、基本的にthat's whyの形で頻繁に使うので、ある種の固定化された構文パターンと言えると思う。COCAで検索してみると

 

That is why:3358例

That's why:27241例

That is the reason why:38例

 

ということで、that's whyの形が圧倒的に多い。

 

しかし、この構文にただ「だから」という日本語を当ててしまうとthereforeとかsoとかとの違いがいまいちわからなくなってしまう。だけど感覚としては、被る部分はあるにせよ、明らかに違う気がする。

 

大堀壽夫 (2013)「That's whyの談話機能」(秋元実治・前田満 (2013)『文法化と構文化』ひつじ書房.)ではこの構文についていくつか面白い指摘がされている。自分の関心のある部分をあげると、

 

①後続する主語は一人称のIが多い。(COCAでThat's whyの主語にIが来る例は6270例なので、確かに多い気がする。)

②後続する内容は既知の情報であることが多い。

③話に区切りをつける働きがある。

④自己正当化のためのストラテジーである。(「それはthat's whyの持ちびく部分が表す発話内容が、進行中の談話において有意義かつ妥当なものであったということの主張である。」(p90))

 

まとめとして次のように書かれている。

That's whyは既知の情報を再提示するか、ある情報を既知のものとして装って提示し、その妥当性・重要性を新たに明示的に主張・確認する働きを持つ。それによってグローバルな話題への話し手の関与を終結させる。同時に、その話題についての話し手のそれまでの態度や発言が進行中の談話において有意義かつ妥当なものであったということの正当化のストラテジーとなっている。(p92)

 

たしかに、上に挙げた入試問題の会話文では以上のことがすべて当てはまるように思われる。

 

もちろんもう少し細かく検討はあるだろうが、感覚としては、確かになぁ~と思う部分が多い。

 

気分で正誤問題(1)

次の問1~問5の下線部(a)~(d)の中から間違っているものを一つ選びなさい。

 (中京大2017)

 

 

1.The problem was (a)that she could understand (b)either English nor French (c)which were (d)most widely used in that region.

 

2.Not (a)only did they kindly (b)come to my home (c)but they also (d)offer real help to me.

 

3.You are the (a)very last person (b)that I would have expected (c)you to say such (d)a thing to me.

 

4.I will (a)never forget that person for (b)having saved me in the sea rescue as (c)far as we (d)live in this world!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

1. (b)  2. (d)  3. (c)  4. (c)

 

簡単な解説

1.The problem was (a)that she could understand (b)either English nor French (c)which were (d)most widely used in that region.

 

(b)either→neither

英語もフランス語も話せないので「どちらも~ない」の意味のneitherを用いる。neither A nor Bのセットで使う表現。

 

★補足

English / Frenchは固有名詞のようなもので、一般的に考えたら関係詞の前にカンマがつきそうであるがこの問題ではついていない。これは問題の不備なのか、意図的なのか、よく分からない。確かに、英語などにも複数の種類がありうるので、そういった場合にはカンマがつかなくても良い。

 

例) Standard English is that variety of English which is usually used in print, and which is normally taught in schools and to non-native speakers learning the language.(名古屋外国語大)

 

しかし本問の場合はそうではなく明らかに他の言語との対比で「英語/フランス語」と言っている。であるから、一般的な学校文法にのっとって考えればやっぱりカンマがつく方が普通な気がする。単なる作問ミスではないとして、その理由を考える。中山仁(2016)『言葉の基礎1 名詞と代名詞』研究社.ではいわゆる制限関係節と非制限関係節の連続性について議論があり、端的にまとめると、「主節の示す内容あるいは談話の文脈に基づいて内容が十分に予測可能な場合、本来の非制限関係節はカンマなしで現れうる」ということになる。

 

例1)He showed it to O'Malley who got up at once and burried to the phone.

「彼がそれをO'Malleyに見せると、O'Malley(警察官)はすぐに立ち上がって電話のところに急いだ。」

 

例2)"Shut your mouth and get your feet together. In future you speak when you're spoken to and not before." He walked round behind Preston who was by now standing rigidly to attention.

「「口を閉じて姿勢を正せ。今後は話しかけられて時だけ口を開け。勝手にモノを言ってはならない。」彼がPrestonの後ろに回ると、Prestonはすでに直立不動で立っていた。」

 

最初の例では主節で示される内容に連続して次に起こる内容が関係節内で表現されているので、その意味で予測可能、とされる。二つ目の例では叱責されたことで態度を改めたことが文脈から十分に予想される。こうした理由でカンマがない、と説明する。

 

河野継代(2012)『英語の関係節』開拓社.では上の一つ目の例とかかわるような指摘がある。そのうちの二つを取り上げておく。

 

例3)Many of the rescued passengers were first taken to the island by helicopters that then returned to continue the search.

「救出された乗客の多くはヘリコプターによってまず島に搬送され、その後ヘリコプターは現場に戻って捜索を続けた。」

例4)...his left hand rests on a lever that activates a vacuum pump that in turn operates both the gas and brake controls.

「彼の左手はレバーの上に置かれており、そのレバーによって真空ポンプが作動し、そして作動した真空ポンプによってアクセルとブレーキ装置の両方が作動する。」

 

同書によればこうしたthenやin turnを含むカンマのない関係節は普通に存在するとされる。そしてこれらの語句の意味を考えたとき、「そしてそれから」くらいの意味であるから純粋に制限的とは言えない。これらも「連続的におこる」というような意味では一つ目の例と重なるものと言える。

 

さて、では本問の場合はどうか。「困ったことに英語もフランス語も話せない」という内容から考えて、「その地域で使われている言語なのに」という部分は十分に予測可能性が高いと言える。そうやって考えれば、この問題でカンマがないことにもそれなりの根拠があると言えなくもない気がしないでもない。けど、ここに下線を引いちゃうのはちょっとセンスがない。

 

 

2.Not (a)only did they kindly (b)come to my home (c)but they also (d)offer real help to me.

 

(d) offer→offered

not onlyで倒置が起きていて、didが使われていることから本来的にはthey cameとなっていることが読み取れるので、手助けをしてくれたのも過去なのでofferedとする。

 

3.You are the (a)very last person (b)that I would have expected (c)you to say such (d)a thing to me.

 

(c) you→なし

thatが作る関係詞節内で、もともとI would have expected the verylast person to say...となっていたところからthe very last personが関係詞として節の頭に移動するため、空所にならなくてはいけない。

 

4.I will (a)never forget that person for (b)having saved me in the sea rescue as (c)far as we (d)live in this world!

 

(c) far →long

意味的に「私が生きている限り」という意味で、期間を表すのでlongにする。

例)As long as he's here, I'll have more work to do.(ジーニアス)

 

as long asは条件の意味でも使われる。

例)I don't care as long as you are happy.

 

★補足

as long asについて現代英語語法辞典(三省堂)には細かく説明がある。これに従うとas long asは三つの意味に分かれるという。

(A)「~だから」

as long asに続く文の文意が真である時、since(理由)の意味になる。口語的。場合によっては先頭のasが省略されることもある。

例)As long as you're just sitting there, come help me with the groceries.

「そなところでじっと座っているだけなんだから、こっちで食品販売を手伝ってよ。」

 

(B)「その間ずっと」

本問のタイプ。

例)We were perfectly warm as long as the sun was shining.

「太陽が照っている間はずっとぽかぽかと暖かかった。」

 

(C)「...であれば」

as long asの後の文意の真実性が未確定の場合。くだけた口語表現では先頭のasが省略されることもある。as long asの一番一般的な意味がこれ。

例)As long as he's handsome, I've no complaints.

「彼がいい男なら、それに越したことはないわよ。」

 

It is 形容詞 of A to doの構文について (2)- Stowell (1991)より

【It is adj of A to do】タイプの構文について詳細に扱っているStowell, T. (1991) "The alignment of arguments in adjective phrases" Syntax and semantics, 25, 105-135.よりメモをしておく。

 

この論文ではこのタイプの構文に現れる形容詞をmental propertyを取ってMP adjectiveと呼んでいる。ここでいうところのMP adjectiveにはstupid / cunning / mean / nice / kind / farsighted / skillful / generous / imprudentが例に挙げられている。こうした形容詞はindividual level predicates(個体レベル述語:以下ILP)として使える。ILPは主に人間を指す名詞の時間に制限されない一般的本質的特徴を述べる述語で、ILPとして使えること自体は他の形容詞と変わりない。

 

(1)John is clever. (MP)

(2)Dave is tall. (MP以外)

 

MPの他と違う特徴的なところは、行為を表す語句を表現できることにある。

 

(3)Punishing the dog was clever (of Bill).

 

これはtall類の形容詞では全く不可能である。

 

(4)*Touching the ceiling was tall (of John).

 

これに対し、MP以外の形容詞類でもimportantなどでは行為を表す語句を表現できる。

 

(5)It was important to win the election. / Sam's seduction of his neighbor was famous.

 

ただし、(3)のMPタイプと違い、人間と行為を同時に表すことはできない。

 

(6)*Bill was famous to win he election. / *Winning the election was famous of Bill.

 

単純に形式上現れるかどうか、だけでなく、(5)のタイプとMPには大きな違いがある。それは、(5)の場合、表される行為に対して形容詞が叙述することになるが、MPの場合、行為と同時にその行為を行う人間についても叙述することになる、という点だ。例えば(3)では「罰すること」もcleverだが、それは同時にBillもcleverだと言っている。この点を次のように書いていてい面白い。

 

"Thus, winning an election can be important even if the winner is not important, but punishing a dog cannot be clever without the punisher being clever in performing this action."

 

特に文字を大きくしたことに意味はない。

 

さて、行為を表す語句は真に選択的(あってもなくても可)で、表現上現れなくても良いし、意味的にも含意してなくても良い。その一方、人間の方は仮に表現上現れていなくても、必ず存在していることに気を付ける必要がある。例えば(1)の文において、文脈によっては「~したとはジョンは賢い」という風に行為の部分を暗に読み取ることもできるが、普通はそのような部分はなく、純粋にジョンの本質的な性質として「ジョンが賢い」と意味していると考える。一方、

 

(7)That was clever!

 

という文があった場合、このcleverは表面上現れていなくても必ず誰か人間を叙述していることになる。

 

あまり個人的には興味がないが、MP adjectiveは人間にMP θ-roleを、行為にEvent θ-roleを付与すると仮定している。

 

そういえば、昨日のメモでは節が来る場合も可能だ、と書いていたが、どうもこの論文によれば節が来るケースはかなり厳しいらしい。

 

(8)*John was cruel that he shot Mary. / *That he shot Mary was cruel of John. / ?It was cruel of John that he shot Mary.

 

MPと似た形式をとりうる形容詞にeagerタイプの形容詞がある。

 

(9)Bill was eager to punish the dog.

 

しかし、このタイプの形容詞は決してof句がつかない。

 

(10)*It was eager of Bill to punish the dog. / *Punishing the dog was eager of Bill. / *That was eager of Bill.

 

MPタイプの形容詞は行為の語句を表現しない場合、ILPとなる。一方、行為を表す語句を表現する場合、MP形容詞はstage level predicate(ステージレベル述語:以下SLP)となる。SLPはILPと違い、その場その場の特徴を叙述するものと考える。以下の(11)では「パーティーを出た」時限定の「賢い」という判断で、必ずしもジョンがいつも賢いとは限らないが、(12)の場合は時間に関係なくジョンが賢い人だ、という内容を持つ。

 

(11)John was clever to leave the party. / It was clever of John to leave the party.

(12)John was clever.

 

(なお、同じ形容詞がILPでもSLPでも使えるケースもある。例えば一般にsickと言えばSLPとしての解釈が多いと考えられるが、場合によっては「いつも病気がちの人」のような意味でILPとして使われることもできる。一方tallのような形容詞も普通に考えたら(非常に残念なことに)身長はケースバイケースで変わる、なんてことはないのでILPとなる。が、もし時と共に身長が変化する、というような状況があれば当然tallもSLPとなりうる。みんな決まってtallはILPだというが、個人的に初めてこの概念を聞いたときは人間時間と共に成長するじゃんと思った。まあ確かに、一度tallになってしまえばshortになることはない、ということなのかもしれないけれど。が、それにしても、「小さいときはクラスでも背の高い方だったけど、今では周りより低い」というようなケースはあると思うんだけれども、まあ、そういうことではないんだろう。)

 

ILPとSLPでは無冠詞複数形の解釈に違いが出るらしい。

 

(13)Firemen are available.

(14)Firemen are altruistic.

 

availableという形容詞はSLPで、altruisticはILPである。一般にSLPの場合は無冠詞複数形名詞はexistentialな読みがになる。一方ILPの場合、genericな読みになる。要するに、(13)では具体的にあるタイミングで特定の消防士が待機している、というような意味になり、(14)では「一般に消防士は利他的である」という意味になる、ということだ。しかし、MPではやや事情が異なる。

 

(15)Men are stupid to mistreat their children. / It is stupid of men to mistreat their children.

(16)? It was cruel of men to beat their dogs yesterday.

 

MPの場合、(15)のように行為の項が現れていればSLPと解釈されるため、無冠詞複数形はexistentialな読みになるはずだが、事実は逆で、genericな読みしかできない。その証拠に、(16)のようにyesterdayのようなexistentialな読みを強制するような環境だと容認度が低い。

 

 

 

疑問文についてはeagerタイプと以下のような違いが興味深い。

 

(17)Who is John eager to talk to? 

(18)Who was John stupid to talk to? / Who was it stupid of John to talk to?

(19)To whom was John eager to talk?

(20)%? To whom was it stupid of John to talk to? / %? To whom was John stupid to talk to?

(21)When was John eager to eat dinner?

(22)%? When was John stupid to eat dinner? /

(23)%? When was it stupid of John to eat dinner?

 

as節に現れるかどうか、という点でもなかなか興味深い。

 

(24)?? John went home, as was smart of him.

(25)* John went home, as it was smart of him.

 

pied-piping(随伴)についてもなかなか面白い。

 

(26)How anxious to leave town do you think Bill is?

(27)How anxious do you think BIll is to leave town?

(28)? How stupid was that of Bill?

(29)How stupid of Bill was that?

(30)How stupid of John was it to leave town?

(31)%? How stupid was it of John to leave town?

(32)*How stupid of John to leave town was it?

(32)*How stupid to leave town was it of John?

(33)*How stupid to leave town was Bill?

(34)How stupid of John was it to leave town?

(35)How stupid was John to leave town?

 

of句に付いても面白い。

(36)Who was John proud of?

(37)?? Who was it smart of to leave town? 

(38)Of whom was John proud?

(39)*Of whom was it smart to leave town?

 

Itタイプのof句は形容詞の直後以外に置けない。要するに、Heavy XP shiftが適用できない。

 

(40)*It was stupid to wash the car of John.

 

これらのことから、of句はSVOOの第一目的語と共通の特徴を持っているんじゃないかと書かれていてなかなかに興味深い。理論的意義はよく分からないけれど。

 

(41)*John gave the book his brother from Canada.

(42)*Who did you say John gave the book?

 

 

MPの中で一部の形容詞は他者との関連で叙述するものがあるという。

 

(43)John was very kind to me.

 

ここでは「私に対して」とても親切だ、ということで、to meという対象が現れている。文中に現れないが、必ず行為の意味が込められている。つまり具体的に私に対して何かをしてくれた、と解釈する。よってこの場合のkindはSLPとなる。

 

しかし、大変不思議なことに、行為を表す語句と行為の対象を表す語句は同時に現れない。

 

(44)*It was kind of John to me to fix my car.

(45)*It was kind to me of John to fix my car.

(46)*John was kind to me to fix my car.

 

次のような文で前置詞句が現れ得ないのもどういうわけか似ている現象と考えられるらしい。

 

(47)John's manner was proud (*of his son).

(48)BIll's remarks were angry (*at the government).

(49)Mary's expression was optimistic (*about the results).

 

当然以上の三つの例で主語をそれぞれJohn / Bill / Mary(つまり人)にすれば何の問題もない文になる。まあ、そもそもJohn's manner was proud.という言い方自体がなかなか勉強になる。

 

どこら辺が似ているのか、説明は書いてあるけれど僕にはよく分からない。まあ、個人的には事実が大事なので、言わない、ということさえ分かればそれでよい。

 

この論文では最後にMPタイプの形容詞に似ているもの(が違うもの)が3種類ほど取り上げられている。

 

一つは心理動詞から生まれた形容詞のannoying / surprisingなど、もう一つがtypical / characteristic / helpfulなど、もう一つがexpectedという過去分詞。

 

(50)It was typical / annoying (of John) to punish the dog.

(51)Punishing the dog was typical / ? annoying (of John).

(52)How typical was it of John to punish the dog? / *How typical to punish the dog was it (of John)?

(53)*It was typical / annoying to punish his dog of my brother John.(heavy XP shift)

 

言われてみれば、似ている気もする。

 

しかし、違いもある。第一に(50)~(53)のような形容詞の例では人間を表す句は現れなくても良い。現れない場合、必ずしも意味として人間を読み取る必要はない。That was cleverといった場合に必ず暗に人が背後にいる場合とは異なる。第二に、定形節(ようするにthat節)が取れる。

 

(54)It was typical / annoying that John punished the dog.

 

第三に、typicalタイプの形容詞ではof句の名詞がwh移動できる(annoyingタイプでは不可)。

 

(55)Who is it typical of to punish his dog?

 

最後の似ているタイプは以下のようなexpectedである。

 

(56)It was expected of John to punish the dog.

(57)Punishing the dog was expected of John.

 

例を挙げるのがつかれたので省略するがexpectedはtypicalタイプに似ているという。

 

 

なかなか勉強になった。

 

 

 

 

 

 

 

It is 形容詞 of A to doの構文について

受験で定番の構文の一つに次のようなものがある。

 

(1)It might be wise of you to avoid studying abroad next year.(近畿大

 

このタイプの構文で使える形容詞は(2)のようなタイプの構文でも使えるとされる。

 

(2)Therefore, if people's words disagree with their body language, you would be wise to rely on their body language as a more accurate reflection of their true feelings.(京都産業大

 

こうした【It is adj of A to do】と【A be adj to do】のパターンを取れる形容詞について何点かメモ。

 

まず具体的にこのタイプの形容詞を挙げてみると、例えばwise / smart / kind / stupid / braveなどがある。

 

このタイプの形容詞では補文を取る時に命令文にはならない。

 

(3)Be polite.

(4)*Be polite to help old folks across the street.

 

このタイプの形容詞の補文は内容的に過去指向であるのに対し、命令文は未来志向なため矛盾するためである。ただし、enoughをつけるとよくなる。

 

(5)Be polite enough to help old folks across the street.

 

このタイプの形容詞の補文には必ず非状態的な述語が現れる。

 

(6)*Tom was kind to be tall.

(7)*It was wise of John to inherit a fortune.

 

まあ、これは意味を考えたら意味不明すぎるが。。。

 

意外な事実としては受動化していはいけない、というものがある。

 

(8)*John was wise to be kicked by Sam.

 

授業ではあまり取り上げられることはないけれど、以下のようなパターンも取りうる。

 

(9)That John helped the lady was polite (of him).

(10)It was polite of John that he helped the lady.

(11)To help the lady was polite of John.

(12)For John to help the lady was polite of him.

(13)John's helping the lady was polite.

 

ここでの(11)の形は人によって容認しない人もいるという。また、(12)においてof himを省略しても良いが、逆に(13)においてはof himをつけることはできないらしい。

 

以上の例では形容詞のみのパターンだが、名詞句の場合も存在する。

 

(14)You were a smart man to leave.

 

ただし、このようなパターンには制約がいくつかある。まず名詞句の名詞には一般的な名詞、例えばman / woman / boy / girlなどしか来ない。

 

(15)*John was a stupid psychiatrist to leave.

 

さらに、このパターンの名詞句には不定冠詞しかつかない。

 

(16)*John was the wise man to run away from the bear.

(17)*There were some stupid men to do such a thing.

 

Itを用いたパターンではthatにすることもできる。

 

(18)That's nice of you to say so.(名古屋外国語大)

 

ただし、感覚的にはthatの場合は不定詞が現れないことが多い気はする。

 

受験産業においてもよく言われるように、一般に不定詞は未来志向だというが、このタイプの構文では例外的に過去を表すのが原則だ。よって、不定詞が完了形にならずとも意味は過去である。がしかし、だからと言って完了形には絶対ならないかと言えばそんなことはない。

 

It's really good of you to have invited me on the walk today.(関西学院大

 

そういえば、一般に不定詞を含むitの構文と言えば仮主語構文で意味上の主語にfor Aを取る。今回のパターンのofは不定詞の意味上の主語なのか?というと、(9)や(10)から明らかなように、形容詞に従えられるパーツであって不定詞の主語ではないと言える。

 

 

参考

中村捷 ほか(1976)『形容詞 現代の英文法7』開拓社.