英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

It is 形容詞 of A to doの構文について (2)- Stowell (1991)より

【It is adj of A to do】タイプの構文について詳細に扱っているStowell, T. (1991) "The alignment of arguments in adjective phrases" Syntax and semantics, 25, 105-135.よりメモをしておく。

 

この論文ではこのタイプの構文に現れる形容詞をmental propertyを取ってMP adjectiveと呼んでいる。ここでいうところのMP adjectiveにはstupid / cunning / mean / nice / kind / farsighted / skillful / generous / imprudentが例に挙げられている。こうした形容詞はindividual level predicates(個体レベル述語:以下ILP)として使える。ILPは主に人間を指す名詞の時間に制限されない一般的本質的特徴を述べる述語で、ILPとして使えること自体は他の形容詞と変わりない。

 

(1)John is clever. (MP)

(2)Dave is tall. (MP以外)

 

MPの他と違う特徴的なところは、行為を表す語句を表現できることにある。

 

(3)Punishing the dog was clever (of Bill).

 

これはtall類の形容詞では全く不可能である。

 

(4)*Touching the ceiling was tall (of John).

 

これに対し、MP以外の形容詞類でもimportantなどでは行為を表す語句を表現できる。

 

(5)It was important to win the election. / Sam's seduction of his neighbor was famous.

 

ただし、(3)のMPタイプと違い、人間と行為を同時に表すことはできない。

 

(6)*Bill was famous to win he election. / *Winning the election was famous of Bill.

 

単純に形式上現れるかどうか、だけでなく、(5)のタイプとMPには大きな違いがある。それは、(5)の場合、表される行為に対して形容詞が叙述することになるが、MPの場合、行為と同時にその行為を行う人間についても叙述することになる、という点だ。例えば(3)では「罰すること」もcleverだが、それは同時にBillもcleverだと言っている。この点を次のように書いていてい面白い。

 

"Thus, winning an election can be important even if the winner is not important, but punishing a dog cannot be clever without the punisher being clever in performing this action."

 

特に文字を大きくしたことに意味はない。

 

さて、行為を表す語句は真に選択的(あってもなくても可)で、表現上現れなくても良いし、意味的にも含意してなくても良い。その一方、人間の方は仮に表現上現れていなくても、必ず存在していることに気を付ける必要がある。例えば(1)の文において、文脈によっては「~したとはジョンは賢い」という風に行為の部分を暗に読み取ることもできるが、普通はそのような部分はなく、純粋にジョンの本質的な性質として「ジョンが賢い」と意味していると考える。一方、

 

(7)That was clever!

 

という文があった場合、このcleverは表面上現れていなくても必ず誰か人間を叙述していることになる。

 

あまり個人的には興味がないが、MP adjectiveは人間にMP θ-roleを、行為にEvent θ-roleを付与すると仮定している。

 

そういえば、昨日のメモでは節が来る場合も可能だ、と書いていたが、どうもこの論文によれば節が来るケースはかなり厳しいらしい。

 

(8)*John was cruel that he shot Mary. / *That he shot Mary was cruel of John. / ?It was cruel of John that he shot Mary.

 

MPと似た形式をとりうる形容詞にeagerタイプの形容詞がある。

 

(9)Bill was eager to punish the dog.

 

しかし、このタイプの形容詞は決してof句がつかない。

 

(10)*It was eager of Bill to punish the dog. / *Punishing the dog was eager of Bill. / *That was eager of Bill.

 

MPタイプの形容詞は行為の語句を表現しない場合、ILPとなる。一方、行為を表す語句を表現する場合、MP形容詞はstage level predicate(ステージレベル述語:以下SLP)となる。SLPはILPと違い、その場その場の特徴を叙述するものと考える。以下の(11)では「パーティーを出た」時限定の「賢い」という判断で、必ずしもジョンがいつも賢いとは限らないが、(12)の場合は時間に関係なくジョンが賢い人だ、という内容を持つ。

 

(11)John was clever to leave the party. / It was clever of John to leave the party.

(12)John was clever.

 

(なお、同じ形容詞がILPでもSLPでも使えるケースもある。例えば一般にsickと言えばSLPとしての解釈が多いと考えられるが、場合によっては「いつも病気がちの人」のような意味でILPとして使われることもできる。一方tallのような形容詞も普通に考えたら(非常に残念なことに)身長はケースバイケースで変わる、なんてことはないのでILPとなる。が、もし時と共に身長が変化する、というような状況があれば当然tallもSLPとなりうる。みんな決まってtallはILPだというが、個人的に初めてこの概念を聞いたときは人間時間と共に成長するじゃんと思った。まあ確かに、一度tallになってしまえばshortになることはない、ということなのかもしれないけれど。が、それにしても、「小さいときはクラスでも背の高い方だったけど、今では周りより低い」というようなケースはあると思うんだけれども、まあ、そういうことではないんだろう。)

 

ILPとSLPでは無冠詞複数形の解釈に違いが出るらしい。

 

(13)Firemen are available.

(14)Firemen are altruistic.

 

availableという形容詞はSLPで、altruisticはILPである。一般にSLPの場合は無冠詞複数形名詞はexistentialな読みがになる。一方ILPの場合、genericな読みになる。要するに、(13)では具体的にあるタイミングで特定の消防士が待機している、というような意味になり、(14)では「一般に消防士は利他的である」という意味になる、ということだ。しかし、MPではやや事情が異なる。

 

(15)Men are stupid to mistreat their children. / It is stupid of men to mistreat their children.

(16)? It was cruel of men to beat their dogs yesterday.

 

MPの場合、(15)のように行為の項が現れていればSLPと解釈されるため、無冠詞複数形はexistentialな読みになるはずだが、事実は逆で、genericな読みしかできない。その証拠に、(16)のようにyesterdayのようなexistentialな読みを強制するような環境だと容認度が低い。

 

 

 

疑問文についてはeagerタイプと以下のような違いが興味深い。

 

(17)Who is John eager to talk to? 

(18)Who was John stupid to talk to? / Who was it stupid of John to talk to?

(19)To whom was John eager to talk?

(20)%? To whom was it stupid of John to talk to? / %? To whom was John stupid to talk to?

(21)When was John eager to eat dinner?

(22)%? When was John stupid to eat dinner? /

(23)%? When was it stupid of John to eat dinner?

 

as節に現れるかどうか、という点でもなかなか興味深い。

 

(24)?? John went home, as was smart of him.

(25)* John went home, as it was smart of him.

 

pied-piping(随伴)についてもなかなか面白い。

 

(26)How anxious to leave town do you think Bill is?

(27)How anxious do you think BIll is to leave town?

(28)? How stupid was that of Bill?

(29)How stupid of Bill was that?

(30)How stupid of John was it to leave town?

(31)%? How stupid was it of John to leave town?

(32)*How stupid of John to leave town was it?

(32)*How stupid to leave town was it of John?

(33)*How stupid to leave town was Bill?

(34)How stupid of John was it to leave town?

(35)How stupid was John to leave town?

 

of句に付いても面白い。

(36)Who was John proud of?

(37)?? Who was it smart of to leave town? 

(38)Of whom was John proud?

(39)*Of whom was it smart to leave town?

 

Itタイプのof句は形容詞の直後以外に置けない。要するに、Heavy XP shiftが適用できない。

 

(40)*It was stupid to wash the car of John.

 

これらのことから、of句はSVOOの第一目的語と共通の特徴を持っているんじゃないかと書かれていてなかなかに興味深い。理論的意義はよく分からないけれど。

 

(41)*John gave the book his brother from Canada.

(42)*Who did you say John gave the book?

 

 

MPの中で一部の形容詞は他者との関連で叙述するものがあるという。

 

(43)John was very kind to me.

 

ここでは「私に対して」とても親切だ、ということで、to meという対象が現れている。文中に現れないが、必ず行為の意味が込められている。つまり具体的に私に対して何かをしてくれた、と解釈する。よってこの場合のkindはSLPとなる。

 

しかし、大変不思議なことに、行為を表す語句と行為の対象を表す語句は同時に現れない。

 

(44)*It was kind of John to me to fix my car.

(45)*It was kind to me of John to fix my car.

(46)*John was kind to me to fix my car.

 

次のような文で前置詞句が現れ得ないのもどういうわけか似ている現象と考えられるらしい。

 

(47)John's manner was proud (*of his son).

(48)BIll's remarks were angry (*at the government).

(49)Mary's expression was optimistic (*about the results).

 

当然以上の三つの例で主語をそれぞれJohn / Bill / Mary(つまり人)にすれば何の問題もない文になる。まあ、そもそもJohn's manner was proud.という言い方自体がなかなか勉強になる。

 

どこら辺が似ているのか、説明は書いてあるけれど僕にはよく分からない。まあ、個人的には事実が大事なので、言わない、ということさえ分かればそれでよい。

 

この論文では最後にMPタイプの形容詞に似ているもの(が違うもの)が3種類ほど取り上げられている。

 

一つは心理動詞から生まれた形容詞のannoying / surprisingなど、もう一つがtypical / characteristic / helpfulなど、もう一つがexpectedという過去分詞。

 

(50)It was typical / annoying (of John) to punish the dog.

(51)Punishing the dog was typical / ? annoying (of John).

(52)How typical was it of John to punish the dog? / *How typical to punish the dog was it (of John)?

(53)*It was typical / annoying to punish his dog of my brother John.(heavy XP shift)

 

言われてみれば、似ている気もする。

 

しかし、違いもある。第一に(50)~(53)のような形容詞の例では人間を表す句は現れなくても良い。現れない場合、必ずしも意味として人間を読み取る必要はない。That was cleverといった場合に必ず暗に人が背後にいる場合とは異なる。第二に、定形節(ようするにthat節)が取れる。

 

(54)It was typical / annoying that John punished the dog.

 

第三に、typicalタイプの形容詞ではof句の名詞がwh移動できる(annoyingタイプでは不可)。

 

(55)Who is it typical of to punish his dog?

 

最後の似ているタイプは以下のようなexpectedである。

 

(56)It was expected of John to punish the dog.

(57)Punishing the dog was expected of John.

 

例を挙げるのがつかれたので省略するがexpectedはtypicalタイプに似ているという。

 

 

なかなか勉強になった。