英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

【would rather+節】について

上智大学の長文問題に次のような会話が出てくる。

 

"Oh, now I'm sure they'll be bringing out their autograph books!"

"I'd rather they didn't," said Mrs. Oliver.

 

下線を引いた構文は受験産業でも教えられることが多いと思われるが、would ratherと言えばどちらかというと助動詞として次に動詞の原形が続く形が多く、上に挙げた例のようにSVが続く形は珍しいと言える。

 

大室剛志 (2018)『言葉の基礎2 動詞と構文』では、以下のようなものをこのSVが続く構文の優先規則と呼んでいる(p166)。

 

a. 補文となる節は仮定法である。

b. 節を従えているのは'd (= would) ratherである。

c. 補文標識thatが無い。

d. 補文の主語は主格である。

e. 主節の主語と補文の主語は異なる。

 

この本では、would rather SVの構文が特殊であるという。それは、助動詞と考えればなぜ後ろにSVが続くかという点で特殊であるし、wouldがもともと本動詞であることを考慮して仮にwouldを動詞と考えても、疑問文が次のような形になることからやはりそれでも特殊な表現である、ということらしい(疑問文では動詞ではなく普通は助動詞が前に出る)。

 

(1)Or would you rather she came to see you?

 

上に挙げたような優先規則に逸脱する例が少数ながら見つかるという。

 

(2)I'd rather him have stayed there because I agree with some of his views.

 

これはBOEというコーパスからの例らしく、このように、目的格になっているという点が上記に逸脱している。こんなのがあるなんて知らなかった。。。

 

このように目的格を取る場合、「補文標識のthatがなく、かつshouldなどを伴わず形態的に動詞の原形の形のみが用いられている (P173)」、とのこと。

 

試しにCOCAで【would rather+代名詞】で検索をかけると、

 

would rather them 7例 ('d rather them 12例)

would rather us 4例 ('d rather us 1例)

would rather me 2例 ('d rather me 8例)

would rather him 2例 ('d rather 11例)

 

がヒットし、一つ一つ例を見ていくと、確かにその条件にすべて従っている。二つほど例を挙げておく。

 

(3)If it takes some of them longer, I would rather them stay and earn the diploma than to quit.

(4)This book tells stuff about Sarah Palin that Sarah would rather us not know...

 

二個目の例では関係詞節内で使われている点が興味深い。

 

本書の調査ではthatがついた例は見つかった例のうち、ほんの6%に過ぎないらしい。COCAで検索してみると次のようになった。

 

would / 'd rather that  45例

 

(5)I 'd rather that you didn't refer to the Folk that way.

(6)For my part, when children grow up I would rather that they fuck than kill.

 

二個目の例はなかなか面白い。「なんでテレビとかで他の人がエッチしているのを見てはいけないんですか?見ると真似すると思うんですか?暴力とか殺人とか普通に見ますよね?『僕に言わせれば、殺人なら全然エッチしてね』確かに~~

 

それはさておき、この例ではthat節SVとありながら、後ろにthan doがついているというなかなか熱い形になっている。

 

入試問題でも一個だけ見つかった。

 

(7)Would you rather that we were clever or that we were happy?(東邦大)