英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

have to / have got to / must

おおよそ「しなくてはいけない」という意味の助動詞表現としてhave to / have got to / mustを挙げることができる。澤田(2014)に書かれていることをメモ。

 

(1)義務付けの主体と客体:

義務について述べる場合、have toは外部(すなわち、外的な状況・規則など)から義務を課されて、そうせざるを得ないという状態を受動的・客体的に叙述し、一方、mustは、義務を課す主体の力(話して・法の権力や意志など)を能動的・主体的に表出する。(p376)

 

とある。ここら辺は授業でも普通に触れる範囲の内容かと思う。

 

(2)You must be back by 10 o'clock.

(3)All cars must have number-plates.

 

上の観点から言うと、(2)では話し手から課される「義務」を、(3)では法律のようなものから課される「義務」を表している。

 

(4)I never remember his address; I always [*must / have to] look it up.

 

ここで表される内容は今までずっと続く事実であり、こうした(既存の)「習慣的状況」に関してはhave toを用いなくてはいけない。

 

(5)It's ridiculous that my daughter [?must / has to] be back by ten.

 

mustは話し手から課される義務を表すということは、話し手は描写される内容について同意しているのが普通であるから、(5)のように「~しなくてはいけない」ということを「ばかげている」という風に述べる場合、mustはおかしいことになる。

 

(6)I have to mow the lawn.

(7)I've got to mow the lawn.

 

have toを用いる場合、「芝を刈ることが仕事だ」という習慣的な意味と、「これから芝を刈らなくてはいけない」という非習慣的な読みの二つの解釈が可能だが、have got toの場合、非習慣的な読みしかない。

 

(8)Do you have to be at work by 8?

(9)Have you got to be at work by 8?

 

疑問文を作る時、have toは助動詞doを用いるため、ここでのhaveが動詞の扱いであるのに対し、haveを文頭に持っていくhave got toではhaveが助動詞の扱いであることを示している。例えば同じことは、have toは動名詞形・不定詞形なども使われる一方、have got toはそれが無理であることなどからも判断できる。また、(7)のようにhave got toは省略形が可能だが、have toは無理である。

 

上で述べた「習慣的かどうか」という観点は、(4)の例文で示されるように、mustの使用の条件ともなる。よって、まとめれば、have got to / mustは発話時における一時的な義務のみを表し、have toはその意味にプラスして、習慣的な義務も表すことができる、ということになる。

 

(10)I [?must / ?have to / ?'ve got to / 'll have to] buy a new car pretty soon.

 

この文は、自分の車が古くなったと感じてそろそろ車を買い替えないといけないと感じたような状況での発言だと仮定する。こうした場合、will have toが他の三つに比べはるかに自然だという。それは、将来ではなく、現時点で義務や必要性が感じられる場合、must / have to / have got toが用いられるが、将来においてその必要性が生じると感じられる場合にはwill have toを用いるためらしい。

 

柏野(2010)『英語語法レファレンス』によれば、上記の意味上の区別とは別次元のところで、「控えめ」を表現するためにmustのかわりにhave toを使うことが多いという。have toの方が客観的である分、意味合いが弱くなる、ということだ。それに加え、くだけた口語ではhave toを使い、mustは堅苦しい言い方をする場合に使う、という文体上の区別のみが適用されることも多く、頻度としてはhave toの方が圧倒的に多い。

 

なお、「~にちがいない」の意味に関しては、have to / must共にその意味の使い方ができるが、小西編『現代英語語法辞典』によれば、have toはある証拠に基づく確かな推論であるのに対し、mustは話し手の推測を表し、証拠は明白であってもなくても良い。さきほどの「~しなくてはいけない」の逆で、「~にちがいない」の意味ではhave toの方が客観性が高い文意味が「強い」ので、要するに、意味の弱いmustの方が頻度が高くなる。

 

 

ついでながら、have toの成立過程について宇賀治(2000)からメモしておく。もともとは、所有のhaveに目的語がつき、それにさらにその目的語を目的語にする不定詞句がついたものが起源らしい。例えば、I have something to say.のような構造である。すでに古英語の時代からあったらしく、語順のバリエーションは以下のようだったらしい(NPsは主語名詞句、NPoは目的語名詞)。

 

(11)NPs have NPo to do

(12)NPs NPo have to do

(13)NPo BPs have to do

(14)NPs have to do NPo

 

このうち、(12)の構造のみ歴史の経過で消失し、残りの形は現在まで存続している((13)については、例えばthe book you have to readのような関係詞化された構造や、話題化を受けた構造などを想定している)。14世紀ごろにSVOの語順が一般的になる流れの中で、(14)のような構造で、NPoがhaveの目的語であることに加え、SVOのO位置(要するにVの次)にあるという理由で、to doもhaveの目的語であるように解釈され始めた。それと同時に、NPoはhaveの目的語ではなく、to doの目的語と解釈されるようになった。(14)の構造においてto doの位置にくるdoが自動詞である場合(すなわちNPoなし)、haveの目的語はto doのみとしか解釈できなくなり、この形をとるようになった時点をもってhave toの形式が成立したと言える。

 

他動詞から始まり、自動詞も使われるようになって、今の英語の形になった、というのは、ちょうどhave PPの現在完了がhave O PPからスタートした、という話と並行的に感じられる。

 

参考

澤田治美(2014)『現代意味解釈講義』開拓社.

宇賀治正朋(2000)『英語史』開拓社.