英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

同族目的語構文(2)

同族目的語構文について久野・高見 (2002) 『日英語の自動詞構文』で一章を割いて議論されている。そこから何点かメモを。

 

まず、昨日のエントリーで挙げた上智大学の英文で使われたlive a nomadic lifeという表現に関して。このliveは自動詞ではなく他動詞だと主張されている。(確かに同族目的語を取る場合のliveが辞書では他動詞という分類がされている。ただし、dieもdie...deathの場合は他動詞という表記になっているが、こちらはitは取れないので、辞書の分類だけでは判断できない)

 

(1)He laughed a hearty laugh. *He laughed it because he was truly amused by her joke.

(2)He lived a happy trounble-free life. He could live it because his wife took care of all the difficulties.

 

laughは自動詞であるから、仮に同族目的語をとっても、その目的語をitで受けることはできない。一方のliveでは、(2)が示すように、itの置き換えができる。ここから、liveは純粋に他動詞と判断するわけだ。確かにコーパスで検索してみても、次のような例が見つかる。

 

(3)Some may live a gender identity that reflects their biological sex, depending on their discomfort.

(4)That is the dietary - or this treatment for gluten intolerance or for Celiac Disease is to live a gluten-free diet.

 

また、この本では、一般的に言われる「同族目的語構文が取れる自動詞は非能格動詞のみ」という制約も誤っていると主張している。非能格動詞は、行為者が意図的な行為を表す自動詞か、経験者の非意図的な生理現象を表す自動詞(例:cough)が当てはまる。しかし、よく例に挙げられる(5)のようなdieは意図的な事象ではないので非対格動詞なはずであるから、上の制約の反例となる。

 

(5)Mark Twain died a gruesome death.

 

さらに、growも非対格動詞なはずだが、(6)に示されるように同族目的語を取ることができる。

 

(6)The tree grew a century's growth within only ten years.

 

参考

久野・高見 (2002)『日英語の自動詞構文』研究社.