京都大2025 大問2(c)について
京都大の問題は毎年面白いところを含んでいるけど、今回の大問2はとてもいい問題だと思う。allの解釈、分詞構文、admittedlyの解釈、などなど、話のネタになりそうなところがけっこうある。いろんな解答速報を見ていると、いろいろ違うのではと思うところがあるのだけど、多分そこらへんは勝手にみんなが盛り上がるので、僕はほかの人が絶対盛り上がらないところだけコメント。
念のため最初に断っておくと、下に書いてある部分が合否を分ける切り札になる、とは全く思わないし、ここが訳せないからと言って落ちるということにもならないと思うし、もしかしたら僕が間違っている可能性もあるので、まあ、参考程度にということで。
さて、それでは問題の英文を見てみよう。大問2の下線部cの部分だ。
(1) What we can do is make observations that tell us about the very early stages of the Universe’s evolution, the first pages of its story. It turns out we can say something sensible about conditions then, and so when observers like me talk about the Big Bang theory, we tend to mean not so much the single moment of beginning but the general and testable idea that, whatever started the thing rolling in the first place, the Universe began its life in a hot, dense state and has been expanding ever since.
ここで、observers like me talk about the Big Bang theoryとあるが、このtalk aboutの意味が今回の(僕の)ポイント。普通に訳すと「私のような観察者がビッグバン理論について語る[議論する]とき」となるが、これだと誤訳だと思う。それでは詳しく見ていこう。
まず、この英文ではBig Bangという用語が話の焦点になっている。本文第二段落にPart of the problem is that “Big Bang” tends to be used to refer to two really quite separate things. と書かれているように、Big Bangという言葉は二つの異なるものを指すのに使われている、という話。直後からそのうちのひとつ目の話が始まる。一つ目は「宇宙の歴史のまさに始まりの瞬間」のことらしい。
さて、そうした話を受けて、and so when observers like me talk about the Big Bang theoryとくるわけだが、このWhen ... talk about the Big Bang theoryは「『ビッグバン』理論と言うとき[という言葉を使うとき]」の意味でとるのが正しい。つまり、「ビッグバン理論について話す・議論する」ではなく、ここでは「ビッグバン」という言葉そのものに焦点が当たっている。
英語のtalk about Xはこのように「Xという言葉を使う、Xという言い方をする、Xと言う」という意味で頻繁に使われる。例えば、辞書の定義で使われることが多い。
(2) Phony has a much wider range of collocates in American English than phoney has in British English. In both British and American English it is frequently used to talk about people behaving in a way that does not seem natural, for example trying to be more interesting, funny or fashionable than they really are. A phoney accent is likely to be used in order to impress people; a fake accent is more likely to be used simply to deceive sb. In American English you can also talk about phony documents / passports / papers / money; in British English it is more usual to say false or fake. (Oxford Learner’s Thesaurus: phoney)
これはphonyという語の辞書での説明だが、ここに出てくるtalk about phony documents ...を「...についても話すことができる」と意味を取ったら意味不明であろう。ここは「アメリカ英語ではphony documentsという言い回しで使うことができる」という意味で解釈するのが正しい。入試問題からも用例を一つ。
(3) People begin to use the pidgin at home. As children are born into these families, the pidgin language becomes their mother tongue. When this happens, the status of the language fundamentally alters, and it comes to be used in a more flexible and creative way. Instead of being seen as subordinate to other languages in an area, it starts to compete with them. In such cases linguists no longer talk about pidgin languages, but about creoles.[関西大]「人々は家でピジンを使い始める。子供がその家庭に生まれると、ピジンは彼らの母語となる。こうなると、その言語のステイタスは根本的に変わり、より柔軟な創造的な使い方がされるようになる。地域の他の言語に服属するものと見なされるのではなく、それらと競合する関係になる。このような場合、言語学者はもうピジンという言葉を使わず、クレオールという言葉を使う」
ここでもtalk aboutは同じ用法である。こういう「用語・言い回しそのもの」に焦点を当てる時によく使われる。同じ使い方をする語句はいくつかあるが、ここでは割愛。とにかく、talk aboutにはこの用法が多いことは知っておいた方がいい。
さて、今回の京大の入試問題でtalk aboutがこちらの用法で使われていることに気づけるポイントはいくつかあるが、二つだけ触れておこう。まず第一に、この文章(入試で切り取られている部分)は全体的に、big bangという用語の話をしているという文脈的なヒント。第二に、主節の動詞がmeanであること。meanはこれ自体大切な語だが、例えば次のような用法が大切。
(4) “How’s he doing in that school?” “No clue. I’m not his teacher.” “I don’t mean his grades. I mean his interactions. Is he making friends? Is he nice?” (It Starts With Us)
ここでI don't mean his grades. I mean his interactions.という部分は「彼の成績の話じゃない、彼がみんなとうまくやっているのかって話をしているんだ」という意味になる。これはHow's he doing in that shcool?と聞いたときに、自分がどういう意味でその質問をしたのか、ということを説明している。このように、meanは「頭の中で実際に意図していることは何か、何のことを言っているのか」を表すのに頻繁に使われる。さらに次のような頻繁に使われる言い方がある。
(5) We say there are 365 days in the year and by this we mean that it takes the earth 365 days to make its annual trip around the sun.[日本大]「私たちは一年には365日あると言うが、これによって意味しているのは、太陽の周りを地球が一周するのに365日かかるということだ」
このby X we mean Yは定番の構文で「Xという言い方でYのことを言う[意味している]」の意味になる。Xには語句や文などが来るが、イメージとしてはXはクオーテーションマークがついていると考えると分かりやすい。
今回の京大の問題も、meanなので、同じように「この用語で私たちが意図している[指している/意味している]のは、…だ」と理解するのが適切であるから、talk aboutは「用語・言い回し」そのものに焦点を当てていると理解するのが適切。ちなみに、When we say X, we mean Y(Xと言うとき、Yのことを意味している)という言い回しも頻度が高いので、これを知っていればすぐにtalk abut Xがsay Xみたいな意味だと気付いただろう。
とはいえ、今回の英文は、若干書き方が悪いというか、なんというか、分かりにくい気もする。というのも、ざっくり言えば「始まりの瞬間だけを指しているのではなく、…な考え方を指している」と言っているが、今回talk about XのXはthe Big Bang theoryである。「瞬間」を指すのはどちらかというとBig Bangで、「考え方」を指すのはtheoryだろうから、本当はwhen observers like me talk about "Big Bang"と書いてくれれば容易に気づいただろうと思われる。
たぶんだけど、この文章に筆者のイメージとしては、おそらく、「『ビッグバン』理論」という感じで、the "Big Bang" theoryのようにBig Bangにだけクオーテーションマークがついている感覚なのだと思う。人が、Big Bangという言葉から受ける印象は「始まりの瞬間の爆発のイメージ」だろう、みたいな話を確かしているので、おそらく筆者が言いたいことは、
「『ビッグバン理論』という言葉の『ビッグバン』の部分に人々は反応して『始まりの瞬間』をぱっとイメージすると思うけど、私たち観察者が『ビッグバン理論』という言葉を使ったときは、むしろ…という考えのことを意図して[指して]その言葉を使っている」
ということが言いたいのだろう。
毎年このtalk aboutの話をし続けてきたが、ようやく出てきた。しかも、僕は入試の前日に「今年はtalk aboutが出る」と某英語講師に予言をしたのだけど、まさか本当に出てきたので、興奮したw
ちなみに、多分気づかれていないけど、これまでも何度かこのtalk aboutは入試問題で問われている。このtalk aboutの用法は非常にIdiomaticな使い方で、マジでよく使われる。talk about Xはひとまずuse the term Xの言いかえも覚えておけといつも言っているのでちゃんと聞いていた人はすぐに気づいただろう。
ちなみに某Sの解答速報では「念頭に置いていることが多いのは」という非常に適切な訳し方がなされている。素晴らしい予備(学)校だ。この訳は「語句に焦点が当たっている」ということをうまく反映させようとした結果なのだと思う。素晴らしい。(Sの偉い人、見てますか)本当に素晴らしい。(Sの偉い先生、見てますか)
まあ、僕が致命的な誤読をしている可能性もあるのでその場合はごめんなさいね~~~
ちなみにこのtalk aboutの用法は今書いている本にかなり詳しく書いているのでそっちも出たら読んでね★