英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

『知られざる英語の「素顔」』のコラム

僕の書いた『知られざる英語の「素顔」』をお読みいただいた/ている皆様、どうもありがとうございます。少しでも楽しんでいただけていれば嬉しいです。

 

元々この本にはいくつかのコラムがあったのですが、もろもろの事情によりコラムはカットしました。そのうちの一つをせっかくなのでここで公開します。同僚や同業の先生方に良く受ける相談として「英語について詳しく勉強したいが、言語学の論文や専門書は自分には敷居が高いので正直読めない。でも英文法について詳しく勉強したいが、何か方法はないか」というものがあります。以下の未公開コラムはそうした相談に答えるつもりで書いたものです。

 

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コラム① 専門書はとりあえず買う

英語について深く知りたいと思う場合、たくさん英語に触れるというのが一つの選択肢であり、おそらくは一番大切なことです。その他にできることには何があるでしょうか。最低限度の知識を確認するのに学習参考書などを頼りにすることは良いと思いますが、狭い範囲の英語しか扱っていないことが多いので、そこで満足してしまうと「軽量化した英語」から抜け出すことが出来ません。そこで僕は、英語の文法や表現を扱った言語学の論文や専門書を読むことをお勧めします。

 「言語学」「論文」「専門書」というキーワードを聞くと、敷居が高いように感じてしまうかもしれません。「読めるものなら読みたいんだけど、難しくて良く分からない」という印象をお持ちの方も多いでしょうし、実際そういう相談をこれまでたくさん受けてきました。そこで、このコラムではそうしたある種の「苦手意識」を少しでも取り除けるようなお話をしたいと思います。

 まず最初に言うと、僕は言語学がさっぱり分かりません。一時期は言語学をちゃんと勉強しようと思った時期もありましたが、あまり興味も持てないし難しくて理解もできないし、学問としての「言語学」とは早期にお別れを告げました。ところが、そんな僕の家には(おそらく)研究者にも負けないくらいの冊数の英語を扱った専門書や論文が積んであります。

 英語を扱った専門書や論文(くどいので以下では「専門書」とのみ表記します)では、理論的で専門的な内容が議論されていますが、英語を扱う以上、英語の「言語事実」が少なからず記述されています。理論というのは「なぜある言語事実はそうなっているのか」を説明するものと言えると思いますが、その理論を述べるためには、説明する対象としての「言語事実」に言及せざるを得ません。

 僕が良く分かりもしないのに大量に研究書を購入しているのは、その「言語事実」を知るためです。300ページくらいの中に、自分の知らなかった言語事実を記述している部分はたったの2ページ、なんてこともありますが、それでもその2ページには価値があると思うのです。

 正直に言うと、僕は専門書を買う時に最初から全部読もうなどとは一切思っていません。「全部読もう」とするから余計に億劫になってしまうのです。読みたいとこだけ読んでいます。中には全部通読したものもありますが、大半は一部しか読んでいません。気負いせず、読みたいところだけ読みましょう。

 「全く意味不明」であったり「実は全然興味のない内容だった」と思って、買ってすぐに読まれることもなく(僕によって)本棚に積まれるかわいそうな本がたくさんあります。ここ数年で強く感じるのですが、そうした「積読まっしぐら」の本たちは、いつか必ず役に立つ時が来ます。英語の勉強を続ける中で、ふとした瞬間に出てきた疑問の解決の糸口が、そうした本の中に実は書かれていた、と言うことが多いのです。ですから、怖がることなく、「とりあえず」専門書は買って寝かせておきましょう。

 日本語で書かれた専門書も大切ですが、英語で書かれた専門書も是非とも読んでください。なぜなら、まず読むだけで英語の勉強になるからです。高校生が英語の長文に取り組むのと同じ感じで専門書を読むわけですね。書いてある内容が仮に意味不明でも、読むだけで英語の勉強にはなるなんて、なんと便利なツールでしょう。

 研究をする人であれば、こういうスタンスで専門書と向き合うことは褒められたことではないでしょう。そもそもこういう読み方は「読んだことにはならない!」とお叱りを受けるかもしれませんが(笑)、英語の勉強のためということであれば、十分立派な学習法です。
 長い年月をかけて言語学の研究が明らかにしてきた、数えきれないほどの英語の言語事実を無視するのは勿体ないことです。あまり硬くならずに、軽い気持ちで読めばいいのです。僕は昔から本当に適当な人間です。「分かるとこだけ拾おう」これが僕が研究書を読むときの心構えです。僕が専門書を読む時に目で追っている文字数の95%くらいはおそらく何を言っているかさっぱり分かっていません。それでも、気づいたら人よりは英語のことに(たぶん)詳しくなっていました。

 さあどうでしょう。なんだか出来そうな気がしてきたんじゃないですか。そう思った方は、本屋の「言語学」「英語学」「英文法」などといったコーナーに行き、興味を持った、英語に関係のありそうな本を試しに手に取ってみてください。あるいは、インターネット通販サイトで「英文法」などと検索をして、出てきた興味のありそうな本をポチっとしてみましょう。きっと、これまでみなさんが知らなかった英語の一面を教えてくれることでしょう。