英語の勉強メモ

英文中で出会った表現のメモや、英語に関わる文献のメモです。

本のおススメ 『認知言語学を紡ぐ』(くろしお出版)

野中大輔さんから『認知言語学を紡ぐ』(くろしお出版)をいただいた。今のところ6つほど読んだが、その中で英語が好きな人におすすめの章を4つ紹介する。

 

まずは野中さんの論文(第三部第2章「打撃・接触を表す身体部位所有者上昇構文における前置詞の選択―hitを中心に―」)から。ここで扱われているのは受験でも定番の構文の一つの次のようなものである。

 

He kept turning round to rearrange things on the back seat to give me more space, throwing shoeboxes toward the back window, which I would have preferred him not to do because more often than not they hit me on the head, and at the same time he was driving with one hand at seventy miles an hour in heavy traffic.(日本大)

 

試験ではよく、on the headというようにtheを用いるのであって、on my headのように所有格ではいけない、という点が聞かれたりする。この論文では、hitという動詞が使われる時、前置詞のonとinを使い分ける要因は何なのかについて実例を用いて丁寧に論証されている。自分は中に食い込むかどうかという視点しかもっていなかったので、大変勉強になった。

 

次に平沢さんの論文(第三部第1章「英語の接続詞when - 「本質」さえ分かっていれば使いこなせるのか -」)。whenと言えばだれでも知っている接続詞で、意味はもちろん「時」であるが、whenの使用の中には「時」では意味が通らないケースが数多く存在する。そうしたタイプのwhenのうちのいくつかのパターンについて扱われている。

 

具体的に入試問題からそうした例を二つほど挙げておく。

 

Biologist E. Lenneberg, writing in the 1960s, summed up this middle position when he stated that infants are biologically programmed to develop language in the same way as much animal behavior is programmed.(早稲田)

 

Paul Bloom, a developmental psychologist at Yale University, argues that Thomas Jefferson, the American philosopher and president, was right when he wrote: "The moral sense, or conscience, is as much a part of man as his leg or arm. It is given to all human beings in a stronger or weaker degree."(早稲田)

 

これらのwhenを「~する時」と訳しても意味が通らないことが分かるだろう。これら以外のタイプも含めて実例を用いて説明されていて、大変勉強になる。

 

後おススメの二編は、第三部第4章の本多啓さんが書かれた「英語における中間構文を埋め込んだ虚構使役表現について」と、第一部第3章の鈴木亨さんが書かれた「創造的逸脱を支えるしくみ - Think differentの多層的意味解釈と参照のネットワーク-」だ。本当はこちらも簡単に内容を書こうと思ったけれど入試問題に該当するいい例が見当たらなかったので、お勧めするだけにしておく。

 

どれも言語学を勉強していなくても英語が好きであれば楽しめる&勉強になる論考で、英語好きには本当におススメ。みなさん読みましょう。

 

 

認知言語学を紡ぐ (成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書)

認知言語学を紡ぐ (成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書)